NEOぱんぷきん 2017年10月号 好きです「遠州」!「春野七不思議と春野五行めぐり」
「春野七不思議と春野五行めぐり」
春野は神秘の里だと思います。気田川を前景に、赤石山脈より秋葉山に連なる山々を後景に眺める景色は、さながら仙境を思わせるものがあります。また、山の尾根で栽培される茶園は、「天空の茶園」と呼ぶにふさわしく、すばらしい「農芸アルカディア」「桃源郷」であろうと思います。春野は北緯三十五度の近辺に位置していますが、北緯三十五度線こそ、秦氏や徳川家康公が意識した神秘の「レイライン」であり、ほぼ同じ緯度には京都、岡崎、鳳来寺、駿府城、久能山があります。気田地区は、この三十五度線が町を貫いているほか、秋葉山、春埜山、新宮池も、概ねこのライン上に位置しています。春野は霊力あふれるパワー地帯と言ってよいかもしれません。
そうした霊地だからか、春野には「春野七不思議」とでもいうべき、多くの神秘的な伝承が残されています。まず遠州七不思議にも数えられる「京丸牡丹」(六十年に一度咲くと言われる花弁が三十センチもある大きな牡丹)、「秋葉山の天狗と山姥」(秋葉山には今も天狗が棲むと言われています)、「和泉平の新宮池」(山頂近くに滾々と湧き出る泉。諏訪湖とつながっていると言われています…ということは桜ヶ池ともつながっている?)、「城山小僧」(魂が宿ってしまった藁人形)、「春埜山の春埜杉と太白坊」(樹齢千年を超える見事な杉の木と春埜山に棲む天狗)、「勝坂神楽とお勝名水」(勝坂の神秘的なお神楽と徳川家康公が喉を潤したと言われる名水)、杉(門島)の「小国神社の鹿苑」(遠江国二之宮の元宮の小国神社。かつて鹿を飼育し、鹿の皮を朝廷に献上)が挙げられるでしょう。
また、春野地区は「五行を象徴する寺社が存在する地」であります。五行とは、木・火・土・金・水の五種類の元素から万物が生成されているとする東洋の考え方で、五種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」と考えられています。近代までは、日本を含む東洋では大きな影響力を持った思想で、暦、身体(五臓)、方角(東西南北と中央)、時刻等々、あらゆるものを五行に当てはめるとともに、五行のバランスを整えて調和を図ることが肝要であると考えられました。漢方医学などは、五行を整えることで病気が治り、健康・長寿の秘訣となると考えます。春野には、この五行を象徴する寺社が全て存在します。「木」は春埜杉に象徴される「春埜山大光寺」様です。まさに木気が盛んなスポットと言えるでしょう。「火」は「秋葉山本宮秋葉神社」様です。火之迦具土神をご祭神としています。「土」は遠江国二之宮の奥宮である門島の「小国神社」様です。ご祭神の大国主大神様は、別名を「大国魂神」「顕国魂神」とする文献もあります。「国魂神」を祀る淡海国玉神社や大国魂神社などでも大国主大神様をお祀りしていることが多く、大国主大神様が国土や「土」を象徴すると言えるのではないかと思います。「金」は気田の「金山神社」様で、金山彦神・金山毘売神という金属や鉱山の神を祀っています。「水」は「新宮池の熊野神社」様か、勝坂の「清水神社」様を挙げられます。どちらも神秘の水が湧き出ています(なお、春野地区からはずれますが、水の神を祀るといわれる光明山に登拝することも「水」の気をいただくのによいかもしれません)。
秋葉神社様を訪れる人は多くても、お参りした後、国道152号線に向かって林道を下り、浜松や愛知県に帰ってしまう方が多いようです。秋葉神社様をお参りした後、「春野七不思議めぐり」や「春野五行寺社めぐり」をしていただき、大地の恵み、自然の恵みを感じて、「神秘の里・春野」を満喫していただけたらと思います。
小山展弘