NEOぱんぷきん 2018年5月号 好きです「遠州」!「遠江国二之宮について」

「遠江国二之宮について」

遠江国の一之宮は周智郡森町にある小國神社様であり、二之宮は磐田市二之宮にある鹿苑神社様です。森町の小國神社様は、一之宮として書籍などでも紹介され、最近では全国から多くの参拝者が訪れています。

しかし、遠江国二之宮の鹿苑神社様の元宮ともいうべき神社が春野町にあることはご存知でしょうか?遠江国二之宮鹿苑神社様は、元慶五年(西暦881年)十月、陽成天皇の御世に、春野町杉字門島にあった遠江国二之宮鹿苑神社様を、当時、国府のあった、現在の磐田市二之宮の地に遷座(分霊とも)したと記録されています。磐田郡の設置がそのきっかけだったそうです。その後、春野町門島の鹿苑神社様は、承平の頃(西暦930年頃)に神社の名称を「小國神社」と改称し、現在に至っているとのことです。現在の春野町門島にある小國神社様こそ、遠江国二之宮の元宮であり、磐田市二之宮の鹿苑神社様にご分霊する前は、唯一の遠江国二之宮だったのです。現在の地名の「門島」は、かつては「神戸島」と書かれていたそうです。また、最近まで、磐田市二之宮の皆様と春野町杉門島の皆様とではお祭りなどでの交流が盛んだったそうです。

現在、春野町杉門島の小國神社様を訪ねてみますと、樹齢数百年と思われる木々に囲まれ、神聖な気が通うように感じられる、素晴らしいところです。ある風水師がこの春野町門島の小國神社の地を観て、風水的にも素晴らしい地であると診断したとのこと。いわゆるパワースポットなのだろうと思いますし、そういうところに直感力の鋭かった古代の先人たちは国の守り神をお祀りしたのでしょう。履中天皇四年十月(五世紀初め頃か)、大国主命様(大名牟遅命様)を遠江国守護神としてこの地に勧請したことが創祀と伝わっていますが、いずれにしてもはるか古代の昔にこの地に祀られたのだろうと思います。またご祭神を「小國鹿苑大菩薩」様としてお祀りしたとの由来もあります。「鹿苑神社」の名前は、宮中に鹿の皮を一石奉納するため、境内に鹿の神苑があったためとのこと。往時の境内には、奈良の春日大社のように鹿がいたのではないかと想像します。

ところで、周智郡森町の遠江国一之宮のすぐ近くには鹿苑山蓮増院というお寺があり、ここに神仏習合時代の「鹿苑大菩薩」様が祀られています。遠江国二之宮の名称が「鹿苑神社」で、神仏習合時代の「鹿苑大菩薩」と名前が一致すること、「鹿苑神社」の元宮ともいうべき春野町杉門島の神社が「小國神社」と改称し、一之宮の名称「小國神社」と同名であること、何か秘められた関係や理由があるように思います。

春野町地区は、諏訪湖とつながっているとの伝承のある、そして山の上なのに水が湧く新宮池、天狗伝説のある春埜山大光寺、秋葉山本宮秋葉神社、秋葉寺、勝坂神楽や京丸牡丹の伝説など、遠江二之宮元宮である小國神社の他にも伝説・伝承の多い、神秘の里であると私は思います。私は「遠野、熊野、春野」と並べられるくらい、春野は、神秘と伝承に彩られた地だと思っていますが、春野の観光資源に、遠州のみならず静岡県はもっと注目してもよいのではないかと思います。

小山展弘